メリザンド市の調査にて収集された、当時の人々の生活資料。
17歳の少女の手紙。
その他の、一緒に収集された資料から、この手紙は書かれたものの出されないままに市の封鎖の日を迎えたものと思われる。
以下、その手紙を掲載する。
17歳の少女の手紙。
その他の、一緒に収集された資料から、この手紙は書かれたものの出されないままに市の封鎖の日を迎えたものと思われる。
以下、その手紙を掲載する。
拝啓 リベラ様ペンダントを壊して、ごめんなさい。あれが、あなたにとってとても大切なものだっていうのはわかっていたのに、私のミスで壊してしまった……。本当にごめんなさい。でも、信じて。けして、わざとやったわけではないの。今更こんなことを書いても、言い訳としか思われないかもしれないけど――。私、左の目がよく見えないの。だからあの時、あなたのペンダントが落ちていることに気づかなくて、それで踏んでしまったの。ごめんなさい。本当にごめんなさい。左目が見えなくなったのは、一月ほど前からよ。遅刻しそうになって走っていて、人にぶつかったって話したことがあったでしょ?あのあと、なんだか左目がぼんやりするようになって、治療師に見てもらったら、白内障だって言われたの。まだ十七なのに、老人みたいで恥ずかしいし、気を遣わせるかもしれないって思って、両親にしか話してなかったの。治療師からは、ちょっとした手術ですぐに治るって言われたけど、それも怖くて……迷っているうちに、あなたの大切なペンダントを壊してしまったのよ。だから、今は後悔してるの。こんなことになるのなら、すぐに手術してもらって治せばよかったって。あなたにとって、あのペンダントは亡くなったおばあさんの形見だったのよね。だから、あれが壊れてあなたがどれだけ辛かったか、私のことをどれだけ怒っているのかは、わかってる。でも、だからってあれからもう半月にもなるのに、全然口を利いてもらえないのは、私も辛い……。メールも着信拒否にされているし……。だから、こうして手紙を書いたわ。お願いだから、私を許して。私はまた、以前のようにあなたと仲良くしたいの。これを読んだら返事をちょうだい。メールでも、電話でも……ううん、同じように手紙でもいいわ。私、何度でも謝るから。本当に、本当にごめんなさい。神聖暦5000年3の月12日アニー・イプセン